Saturday, December 25, 2010

チェーザレ 破壊の創造者(8) (KCデラックス)

Author : 惣領 冬実
Total Page : 236
Publisher : 講談社
Publication Date : 2010-10-22

チェーザレ 破壊の創造者(8) (KCデラックス)
>> 弱冠17歳のチェーザレの「無駄の無い」人生に…
 スペイン連合軍がグラナダに入城、ムスリムは無条件降伏及び完全撤退を承諾。

これによってレコンキスタは終結を迎えた。



 喜びに沸きかえる場でミゲルはチェーザレに呟く。

「どちらにせよ元々流浪の身だ。故郷などあってないようなものだ」

「ではいったい何に乾杯しよう」

「そうだな…今日まで生き延びてきたことに」



 また、フィレンツェで行われる祝祭に招待され同行したラファエーレは笑う。

「要は生き延びればよいのですよ。最後まで生き残った者に神は微笑むのです」



 「生き延びること」が難しかった時代。

生まれた時から陰謀や画策の中で生きてきたチェーザレの、無駄の無い人生。

それは強烈なカリスマ性を感じさせつつも、それだけに悲しい。

アンジェロがある娼婦と出会う「自由」を持つのと対照的に、

チェーザレの人生は、家を、ひいては国家を背負ったものなのだ。



 以前イタリアを旅した時、都市間で争った歴史を聞いて不思議に思ったが、

日本での戦国時代と考えれば納得がいく。

家々、都市の代表といえどもそれぞれは「糸」でしかなく、

縒り合わさり一本の「綱」とならなければ他国との対抗は難しい。

更にその、いつ解けるとも知れぬ紐に「結び目」を作る者こそ、真の統治者だ。

チェーザレは、イタリアの要となれるのか。



 今巻はスフォルツァ家など、居城が観光名所になっている登場人物も多く楽しめた。

また次巻への引きが大いに気になるところで終わっており、続巻に期待する。
>> 歴史の教科書よりも面白すぎる
塩野さんが描く世界はこのようにはいかない。

やはり絵の力は大きい。

面白すぎて、細かすぎて、日本人にしかかけないヨーロッパがここにあるのだ。
>> 世界の中のイタリア
イタリア人が自分たちのことをヨーロッパの中だけで考えていればよかったのは1491年まで。本巻で描かれる1492年以降、イタリアも世界の中に組み込まれていく。しかし、都市国家に分裂したイタリアは、自分たちの足元を固めるのが精一杯である。チェーザレの悩みもそこにあり、そのことが詳細に描かれている。



1492年は世界史レベルで大きな出来事が相次ぐ。

レコンキスタ、コロンブスの新大陸到達、スペインにおけるユダヤ人追放。

このうち、日本において「ユダヤ人追放」は軽く見られがちだが、ヨーロッパにおいては重要な問題である。

果たして「ユダヤ人」であるミゲルはどうなるのだろう?

1492年は始まったばかりだ。

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