Monday, November 1, 2010

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

Author : マイケル・サンデル
Total Page : 384
Publisher : 早川書房
Publication Date : 2010-05-22

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
>> 哲学を身近に引き寄せる本
NHKで放送している『ハーバード白熱教室』のマイケル教授の講義を元に書かれた本。

この本は、金融危機や経済格差、テロなど困難な状況の元でよい社会をつくるためにどうしたらいいのか?我々に問いかけます。

アリストテレス、ロック、カントなど古今東西の哲学者たちを引き合いに出して、哲学を学んでいく内容になっています。

こうした知的な内容に接して、学ぶことに憧れと希望を持っていた学生時代の気分を味わえる一冊です。
>> 良くも悪くもアメリカン
哲学を抽象的な概念から現実に解き放ち、教室で取り上げて議論しよう。良いことだと思います。概念を難解な言葉で弄ばず、卑近な例も使いながら、現実世界のものとして消化しようとすること、良いことだと思います。学生として教室でそこに「参加」することが出来たら、それは素晴らしい体験になるのだろうなと思います。



ただ、それを本にして、その場の緊張感無しに読むと浅薄な感じになるのも否めず、その意味では残念な本です。愚直に問題に向かっていく姿勢は、とてもアメリカ的で、好感が持てるのですけれど。ハーバード・ビジネス・スクールのケースを「読む」ことはできるけど、「学ぶ」ためにはその場に参加しないといけないというのと似ていると思いながら読みました。
>> これ、正義?!
始めに、著者は正義が何かを示さないと断っておきながら、

アフガンでのシールズの行動に、「殺しておくべきだったのだ」と断言。

民間人(推定)を殺すのが正義?

最低限の国際法も守らないで、それを正義と言うのか?!

所詮アメリカの正義の話なのかな〜と疑問が生じて、読み進むのが苦痛になりました。

結果的に、仲間を多数失ったにせよ、その時点での彼の行動は正しかったはずだ。

羊飼いに出会ってしまったのは彼らの落ち度であって、仲間を失った原因はそこにある。

殺さなかったからと言う理由は二次的なものでしかない。

罪のない羊飼いを殺せなかったそのシールズメンバーが、

今も後悔に苛まれているのかと思うと心が痛みます。

同じ考えの人、多いのでは???

その後、功利主義とモラルの間でジレンマが繰り返されるのですが、

功利主義とモラルはそれほど相反するものでしょうか?

一人の子供に不幸の全てを背負わせて利益を得たところで、

良心の呵責が大き過ぎて、その他大勢も幸せでなど居られないはず。

良心の充足や咎めも計算項に加えるなら、最大幸福の追求も悪くないのでは?



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