Author : 村山 斉
Total Page : 226
Publisher : 幻冬舎
Publication Date : 2010-09-28
宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)
>> 中高校生(と物理には興味があるが苦手な大人)向き、こういうのが新書の役目だと再認識させられる
中高校生向きに易しく語りかけるように書かれている。今や、新書は日本最高の知性だそうだが、
(嘆かわしいことではある)
かつて新書は各分野へのいざない、各分野へニョキ案内人だった。
ぼくは文系なのでこの本に惹かれて物理研究の道に入ることはきっと無いだろうが、
55歳だし。中高生がこの本を読んでぶつるを志せば日本んお理科離れなんてのはなくなるわけだ。
かつてはこういうすぐれた新書が「おいでおいで」と若者を誘っていたのである。
では本書から問題ひとつ。
「すべての星と原子を足しても宇宙全体の重さはほんの4%。では残り96%はなにか?」
佐々あなたも物理をやると面白いですよ。
>> 「Grand Design」が成っていない !
素粒子物理学の立場で宇宙の成り立ちを概説した本。著者はIPMUの機構長である。平易な例を多数引用したり、くだけた文体を用いたり、湯川、朝永、小柴、南部、小林、益川、江崎の各ノーベル受賞者をソツなく登場させたりの工夫は見られるものの、どのような読者を対象にしているのか旗幟不鮮明に感じた。宇宙物理学や量子論に詳しい方には得る所がなく、宇宙や星に漠然とした憧憬を持っている方には(著者の意に反して)重い内容である。直前に、ホーキング「The Grand Design」を読了していたが、記述内容や事例に重なる箇所が多く、この点でも不満を感じた。
アインシュタインの相対性理論にとって、ビッグバン(初期状態)は特異点であって、その理論は成立せず、このビッグバンやインフレーション理論を説明するためには量子論が欠かせないという点を初めに説明しないと、宇宙を語るために何故量子論が出て来るのか良く分からないと思う。素粒子について段階を追って延々と説明する構成は、分かり易いようでいて、最終目的が見えず読者にとって却ってツライのではないか。
著者はIPMUの機構長という事もあって、素粒子やその実験の大変さの説明に力を入れ過ぎていると思う。本書の題名を見た方は「宇宙の成り立ち」を説明した本だと思って手に取る筈で、その意味で期待を裏切っているだろう。「Grand Design」が成っていない。最後に笑い話を装って"予算"の話が出て来るが、穿った見方をすれば事業仕分け対策用に緊急に書かれた本のようにも思われた。
>> 今、再び宇宙へ目を向けてみるきっかけを与えてくれる本
小惑星イトカワの探査機「はやぶさ」の奇跡的な
地球帰還で宇宙への関心が高まった今、時期を得た
刊行といえます。著者は東京大学の数物連携宇宙研究
機構長といういかめしい職にありますが、写真で見る
限り多大な業績を上げた学者というよりフリーターと
いった若くて親しみやすい雰囲気の方です。ほぼ同時
にやはり宇宙の本を2冊出版されています。
本の内容は題そのもの、宇宙の成り立ちを素粒子物理学
の立場から、私たちのからだとの関連にも言及して説明
したものです。「宇宙という書物は数学という言葉で
書かれている」というガリレオの言葉を最初に引用して
いますが、この本では数学はほとんど出てきません。
易しくほのぼのとした文体で、分かりやすくて楽しい
読みものとなっています。最後には、日本のノーベル
物理学賞受賞者の系譜が関連づけられており、大変興味
深いです。
宇宙のことを多少勉強した人にはそれほど新しい内容では
ないと思われますが、入門編として読めば宇宙への興味が
湧いてきます。印税は著者の所属する機構へ資金として
寄付されるとのことで、読者もささやかながら宇宙研究へ
貢献できることになります。
私は娘が今年から宇宙物理を学び始めたので読んでみました。
体は小宇宙と考える左門 新
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