Tuesday, March 15, 2011

悪人(下) (朝日文庫)

Author : 吉田 修一
Total Page : 280
Publisher : 朝日新聞出版
Publication Date : 2009-11-06

悪人(下) (朝日文庫)
>> ハッピーエンドじゃダメなんですか?
ちょっと読み終えて時間をおいてレビュー。



結論としては、悪人っていうのは居なくて、全てが人間らしい人達だった。

不器用で無知な主人公も、出会い系にはまる女も、脅してお金を搾取しようとするヤツも。



ちょっと真摯に見れば、前半から人間の嫌な面をクローズアップしてあって「こんな人間居るのか?」と、本当に不幸で不器用すぎて、アル意味現実的では無い感じは否めない。というか、ただ可哀想。



また、事件発生もなんだけども、無いことは無いが、本当に運の悪い感じだから、ソレは作者の匙加減だとは思うんだけども、出来れば最後で報われて欲しかった。



下のストーリー的には流れるようで、事件が発生したから光代と出会うことも出来た、その辺りは切ない。愛を知ったから主人公は光代の為に嘘を言ったように思える。ただ、光代がしていたのは恋であって、最後の最後の、主人公の嘘に、気付けていないのが哀しい。九州訛りだからなお



そんなん解らないヒト居るの?とも思うから、ソレはせめて作者の匙加減で、幸せに、せめて主人公の刑期くらいは付け加えて欲しかった。読者に丸投げは、哀し過ぎると思う。



哀し過ぎると言うか、そんな風にした方がバランスがあるように思える。終始人間の影の部分を見せ付けるような感じだから、最後くらい陽の部分も。人間は報われたい(救われたい)といつも願っているもんだろうから
>> 他人から汲み取る能力
寂しさを埋める為に他人に出来る限り応えてあげたいとする男。

人から関係を切られない限り自分から関係を断つ事がない。母親の後悔を軽く思わせる為、金を無心する行動で自分を厄介な人間とする深い優しさ。一つの事件でそれぞれの人生が主人公を推測させる。

殺したのは誰か?は明確だが、背景が見えた時、彼に何かを思わずにはいられない。そして、彼は一緒に行動した女を本当に好きだったのだろうか?と。他人の優しさや思いやりを汲み取れない、気が付かない、もどかしさ。読み終わると寂しくなるような本でした。
>> 盛り上がりがイマイチ?
物語の前半部分は女の子を殺したのは誰なのかということを主軸に展開しますが、後半は主人公の"祐一と光代"に焦点が絞られ、祐一の過去、家庭環境が重なり、結末へと向かいます。

最後に説明し過ぎなところもあり、少し盛り上がりにかけていたかと思いましたが、情景の描写や場面展開がうまく、次へ次へと読ませますね。

吉田修一の作品はパレードしか読んだことがなかったけど、ほかのものも読んでみようと思いました。

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