Friday, March 25, 2011

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

Author : 吉野 源三郎
Total Page : 339
Publisher : 岩波書店
Publication Date : 1982-01

君たちはどう生きるか (岩波文庫)
>> 大人であればこそわかること
「あの時ああすればよかった」と思える人は、速度は人それぞれでも、徳を高める道を選び歩んでいることでしょう。

誰しも「自分に正しくありたい」と思うからこそ、この本が多くの人に感銘を与え、そして私の心を震わせたのだと思います。





一方、自分にふりかかる日々の出来事に後悔の念のない人というのは、徳を積み終えた稀有な人か、あるいは自己を省みない、徳を積むことを放棄した人でしょう。





現在小中学校での道徳教育が軽んじているといわれます。

そしてこの流れは、今の政権が大きく関与しているとも。



殊に最近は、マスメディアの力も相まって、何でもかんでも裁判で白黒付けるという風潮が高まり、定着しつつあります。

裁判は法律をもとに人を裁きますが、法律は社会のほんの一握りのルールしか定めていません。これまでは裁判にもならなかった他愛なことを題材にしたTVの法律番組があるほどですが、本当は社会で共通する道徳(=倫理、=社会科学)によって判断でき、そして対処すべき事柄が大多数なはずです。

きっと、こういった社会通念が希薄過ぎる時代になってしまったことこそ、この本が現代でいっそう輝く一因なのかもしれません。





また、この本は、私が大人であればこそ多くの示唆に満ちていました。



横暴な権威ばった上級生に対して、断固とした気概を見せた北見君。その結果、周囲の大人たちを揺り動かし、上級生による不当な支配体制を改善することになります。



これに比して、日本固有の領土に対して領有権を主張する隣の大国に脅える時の政権は、本書中の悪友山口君にへいこらする子分のよう。日本の領土である証拠を世界に発信し続ければ、友好的な数ある他国が手を差し伸べてくれるかもしれないだろうに。



日本人的なコペル君のような優しさのみならず、北見君のような強さや気概が必要です。

かの「強くなければ生きていけない」という名言が自ずと思い浮かび、この名言の心からの意味が沁み込んできました。





自分の幼い子ども2人には、簡単なストーリーに置き換えて、早くからこの本が意味することを伝えていきます。
>> 常に自分の体験から出発して正直に考えてゆけ
 この本については、既に多くの方がレビューをしている。多くの人が良いと言うというだけでは、その本が、「読む人にとって」価値を持つかどうかはわからないけれども、一読の価値があることは証明されていると言ってもよいと思う(レビューで、こんなにも多くの人に、好評価「しかされない」本も珍しいのではないだろうか)。

 なるほどこの本には、扱われている時代が我々にとってなじみの薄いものになってしまったという面はある。そうした「欠点」から『14歳からの哲学』のような本も書かれることになったらしい。またマルクス主義的思想が背景にあることも容易に見て取れる。そこから「理想主義」の謗りを受けることにもなる。だが、そんなことに何の意味があるだろうか。ここには確実に著者の「リアル」がある。「常に自分の体験から出発して正直に考えてゆけ」という彼の言葉は、彼自身を示す言葉でもあるし、(他の方はどうかは分からないが)少なくとも私にとっては常に立ち返るべき言葉である。

 この本は確かに「子ども」向けに書かれている。だが、それはむしろ他律的な状態(つまりカントの言う「未成年」状態)のことだと解するべきだろう。実際本書には明らかにそう解釈すべき記述があるし、物語自体が、啓蒙的あるいは教養小説的性格を持っていることは明白である。

 だからこそ、この本は万人のための本なのだ。思想がリアリティーを失っているような時代には特に、自分の体験から正直に考えた人間の言葉だけが、他者を感動させることができる。人に「読むべき本」を提示しづらくなっている現在、この本は数少ない例外である。つまりこの本は言葉の真の意味での古典なのだと、私は思う。
>> ホントにいい本
タイトルだけでは難しそうで なかなか手にとらないかもしれませんが 本当にいい本と出会ったとおもいます。子供(中学1年)に初めての哲学書として プレゼントしました。時代に関係なく読み継がれる理由はやっぱりこのストーリーだとおもいます。



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