Monday, March 14, 2011

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

Author : ダニエル・ピンク
Total Page : 306
Publisher : 講談社
Publication Date : 2010-07-07

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
>> 「なるほど!」と数知れず思いました
人類には行動の動機付けとして、生物学的な動機付けと周囲からの報酬や罰に対して反応する動機付け(アメとムチ)があるが、第3の動機付けとして「内発的動機付け」があり、これをコンピュータのOSになぞらえて「モチベーション3.0」と命名し、様々な仮説と検証を行った上で詳細に説明した解説書。



生物学的な動機付けを「モチベーション1.0」

「アメとムチ」の動機付けを「モチベーション2.0」

と称し、多少の修正を加えた「モチベーション2.1」なども登場します。これはOSになぞらえて「モチベーション2.0」にはバグがあり、これを修正(アップグレード)したものと定義していますが、これらは根本的な以下のような欠陥があり、



アメとムチの致命的な7つの欠陥



1.内発的動機付けを失わせる。

2.かえって成果が上がらなくなる。

3.創造性を蝕む。

4.好ましい言動や意欲を失わせる。

5.ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長する。

6.依存性がある。

7.短絡的思考を助長する。



「内発的動機付け」=「モチベーション3.0」の必要性を説きます。



読んでいて「なるほど!」と数知れず思いましたが、途中マネジメントの説明にかかる際にイマイチよく理解できず、「よく解らん。おかしいな」などとつぶやきながら読み進めました。



以前に読んだ、ドラッカーの「マネジメント」に書いてある内容に「モチベーション3.0」は似ているような感じがしていたのですが、マネジメントを否定するような記述が続いたためだったのですが、進めていくうちに謎は解けました。



「マネジメント」は「コントロール」ではない



ということでした。

「管理(マネジメント)」は「統制(コントロール)」ではないということ。



モチベーション3.0の本質は「自律性(オートミー)」「熟達(マスタリー)」「目的」であり、「自律」の反対語が「統制」であるということがよく解りました。



最後のほうでドラッカーの紹介の項目がありますが、「マネジメント」は「セルフマネジメント」と記述しています。「管理」は「自己管理」すなわち「自律」。

大変に納得しました。



この作者はテーゼとしてオープンソースソフトウェアを紹介していますが、OSSの殆どはモチベーション3.0で開発されていることになります。

以前にLinuxの開発者・リーナス・トーバルスの著書「それがぼくには楽しかったから」を読んだことを思い出しました。

OSSを紹介する論文「伽藍とバザール」は大変有効な論説だと思いますが、この本はそれを大幅に補完する読み物であると思います。



ただ、IT関連に詳しくない方は難しい本かもしれません。





マスタリーに関しては「プログラマー まだまだ 現役続行」が参考になります。
>> 使用者に 利用されるかも しれないな
1.内容

現代社会は、必ずしもうまくはいっていない。人間性を無視したシステムがまかり通っているからである。すなわち、モチベーションには、飢えをしのぐ段階の1.0、報酬でやる気を起こさせる2.0、内発的な動機付けでやる気が出る3.0があるが(すべて詳しくは本書)、現在のシステムは、2.0を前提とするものが多い。2.0の前提が正しくないことは、すでに科学的に証明されている。これからは、内発的な動機を生かす3.0を前提としたシステムを導入すべきである。このような意識で議論を展開し、お勧めの本や、するべき質問などが書かれている。



2.評価

著者の見解は、私もどこかで見たことがあるので、「科学的に証明されている」は、おおむね妥当だと思う。本書のとおりならば、個人的にはよりよい社会になるのではないかとも思う。ただ、「平均より高い報酬を与える」(p236)と書いてはあるが、2.0より金銭的報酬や時間の概念を重視していないので、使用者にうまく利用される可能性があり、読者の多数を占めると思われる労働者にとっては警戒する必要もある。警戒を喚起する意味で星1つ減らして、星4つ。
>> マズローとの本質的違いは?
モチベーションの本を読むと必ずと言ってよいほど出てくるマズローの欲求階層説との本質的な違いがあまり見えません。そこでは、まず生存に必要な欲求を満たすために、そしてその欲求が満たされれば他者との関わりや承認といった欲求を満たすために、そしてそれらも満たされれば仕事そのものから得られる喜びや自分自身の理想への近接のために、人は働くとされています。

内発的動機づけという言葉はずっと昔から言われていることです。

新しい言葉を用いているように見えても、本質はあまり変わっていないということではないでしょうか。



もちろん、筆者の講演等での話術が長けていて、「なるほど」とオーディエンスを唸らせるかも知れませんが、それは本書とは別で評価すべきことだと思います。



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