Wednesday, June 8, 2011

ましろのおと(1) (月刊マガジンコミックス)

Author : 羅川 真里茂
Total Page : 216
Publisher : 講談社
Publication Date : 2010-10-15

ましろのおと(1) (月刊マガジンコミックス)
>> 津軽三味線
 好きな作者の知らないタイトルなので買ってみました。この作者でハズレに遭遇したことがありません。今回もアタリでした。津軽三味線という知らない世界にダイナミックに浸らせてくれます。漫画では音は伝わりません。それでも画の持つ力でこれでもか!っていうほど津軽三味線の迫力が伝わってきて、成程、津軽三味線とはこのようなものだったのか、と溜息を吐きます。あと西日本の人間なので九州・中国・関西あたりの言葉はけっこう得意なのですが北のほう、特に青森の言葉はまったくわからないのですが、バイリンガルになれそうです。方言的な意味で。

 けっこうイケメンな主人公と、それを取り巻く家族であるとか周囲の人々であるとか状況は些か漫画的で派手ですが、足を引っ張るどころかむしろそれも面白いです。学校生活もスタートしてどうなるのか先がまったく読めませんが、このまま『しゃにむにGO!』のような爽やか部活ものになってしまうのかそうでないのか、12月に発売されるという2巻を楽しみに待っています。
>> 弾きたい音と描きたい漫画
あ、これが描きたかった漫画なんだな。

と、いつもいつも伝わってくる、羅川さんの漫画。



今回も、まずコミックスの帯を見た時にそう思った。

津軽三味線。

そして、少年漫画誌での連載、ということにも。



友情や、性愛や、故郷や、育児。

人間を描くというところに徹していて、

少女漫画や少年漫画、または女性向けなのか成人男性向けなのか、

そいうジャンル分けが必要ない漫画もあるんだなと、私が初めて感じた漫画家でもある。



今回は今まで以上に、単純に、純粋に、

津軽三味線を描きたいんだなと強く強く感じた。

ストーリーは、意外にも王道。

故郷・青森から逃げ出すように、上京。

それでも津軽三味線は捨てない。

東京で自分の枠をつきやぶるような人たちと出会い、

音を取り戻して、成長していく。

1巻は、その成長を予感させるところで終わり。



王道にしても、そこにいろいろなものがついてくるのが羅川漫画。

最初は大ッキライだと思っていたタケトも、

だんだん親しみがわいてくるから不思議。

主人公に欠けたものを、知らないうちに周りが埋めていき、

そして自ら、自分を取り戻し、開拓する力を得ていく。

完全無欠のヒーローがいないから、「色々ついてくる」と思えるのだろう。



私がこの先一番気になるのは、兄の若菜ちゃん。

羽海野チカさんの『ハチミツとクローバー』の、

天才(奇才?)森田さんの兄・馨とその姿が少しかぶった。

才能というのは残酷なもの。

主人公・雪の才能から生まれるこの漫画のストーリーであり、

才能に挫折していく人物が存在するのもまたこの漫画。

どちらも孤独。それを、どう乗り越えていくのか?

それを思うと、本質的には才能を描く漫画は残酷である。



それにしても作者は上京のストーリーをこれまでにもいくつか描いているが、

単発ではなく、続いていく物語として描きたかったんだな、としみじみ思ってしまった。

上京は、やはりゴールではなくスタート。



少年漫画的な演出が目立つので、羅川漫画でのその良し悪しをはかりかねて星4つ。

好みは分かれると思うが、こういう女性のたくましさは女性漫画家ならでは、と思う。
>> 作者の実力を物語る意欲作。すごい。
若過ぎる津軽三味線奏者を起点に描かれた作品。

第一巻でありながら、一冊に詰め込まれた情報量に驚かされる。

展開における起承転結の巧みさからか、思わず最後まで読み進めてしまった。



とにかく読者の見る目を試しているのではないかというスルメ感。



誰にでも解り易い簡潔なストーリーでありながら、要所要所の説明が手堅い。

主人公への好奇心が物語への関心へ移り、これからどうなるのかを求めさせる。



今後を読み手に想像させるリアリティや表現は素直に楽しめる。面白い。

漫画的な表現がストーリーのリアリティを損なわないバランス。

深読みさせてくれる懐の深さには二度、三度と読み返してしまう。



作品のインパクトが殺人やホラーなどのマイナス感情ではないのに、これだけ記憶に残る作品は珍しい。

次巻が楽しみ。

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