Saturday, July 2, 2011

センゴク外伝 桶狭間戦記(4) (KCデラックス)

Author : 宮下 英樹
Total Page : 248
Publisher : 講談社
Publication Date : 2010-10-06

センゴク外伝 桶狭間戦記(4) (KCデラックス)
>> いよいよ大詰め
桶狭間合戦という大舞台を前に、全体を張り詰めた空気が覆い、やや展開が地味になってしまっている。しかし、物語が大詰めを迎えるにあたっての緊張感は本巻の端々から伝わってくるだろう。



今川義元という武将を版図だけ広い都かぶれの凡将のように思っていらっしゃる方も未だに少なくない。しかし「海道一の弓取り」の名は伊達ではない。

戦上手というのは白兵戦の上手い下手だけではない。戦を大局で捉えたときに、如何に効率良く結果的な勝利を得ることが出来るか、そして如何にそれを支える国造りができるかというのが重要なのである。戦国を見回して彼ほど戦わずして勝つことを実践し、しかも実現できた武将はいないだろう。それこそが彼の武人としての実力であり、当時の紛うこと無き評価だったのだ。かの武田信玄でさえ義元の生きている間は彼との同盟に全力を尽くし、合戦を避けたと言われている。



そんな彼が飢饉の余波を受けて尾張侵攻を始める。統制の取れた大軍相手に戦況は圧倒的に織田に不利である。しかし父信秀の無念を知る信長には降伏など到底受け入れられる事ではなく、二人の名将は激突することになる。



飢饉というやむを得ない状況で生き残りを賭けて、運命が両者の命を一点で収束させていく。そういう様が本巻では無駄なく丁寧に描かれている。地味だが緊張感あふれる第4巻のストーリーテリングにより、否応無く最終巻(第5巻)に向けて期待が膨らんでしまうだろう。

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